伝わる話し方の専門家、小紫真由美です。
経営者のHさんは、「社内の活性化」をテーマに
コーチングを受けてくださっています。
社員同士はもちろん、自身と社員の間でもコミュニケーションが
満足に取れていないことを問題と感じたHさん。
1人1人の
社員の話を聞こうと、
面談を行いました。
※写真はイメージです
その際、社員に向かってHさんが投げかけた質問は、
「会社への要望はありますか?」
というものでした。
しかし、尋ねられたメンバーの大半は黙りこんでしまい、
アイデアらしいアイデアは返ってきませんでした。
~前回の内容はここまで~
さて、Hさんの質問は、なぜ相手のアイデアを引き出せなかったのでしょうか。
その理由は
相手が考えるための「時間」と「手がかり」が足りなかったからと言えます。
質問に答えるには、当然、「考える」必要があります。
しかし、
「会社への要望はありますか?」といきなり尋ねられても、
すぐに返せる人は、ほぼいないでしょう。
(もし、すぐに答えられる人がいるとすれば、それは、常日頃から、この問いについて
自分自身であれこれ考え、準備が出来ている人だけです。)
では、具体的には どうすれば相手から「答」を引き出せるか。
おすすめの方法を2つお伝えします。
①質問の目的・意図を伝える
たとえば、こんなふうに切り出してみてはいかがでしょう?
「実は、今回、〇〇さんを含め、社員のみんな一人一人と話がしたくて、
こういう時間をとってもらったんだ。
・・・というのも、実は私自身、反省していることがあるんだよ。
わが社では、ずっと前から、『コミュニケーションを大切に』とか
『発言は自由に』というスローガンを掲げてはきた。
でも、実際は、社内はいつもシーンとしているし、
それぞれが与えられた仕事だけに取り組んでいるだけで、
社員から「こうしよう」「ああしよう」という提案も意見も出ない。
なぜこうなってしまったかを考えると、
まず私自身が仕事に追われ、みんなの意見を聴こうとしてこなかったことが大きい。
せっかく優秀な皆さんに来てもらっているのに、一人一人がどんな人たちなのか、何が得意なのか、
日々何を考えながら仕事をしているのか、、、。
そんなことを気にかけもせず、ここまで来てしまった。
トップの私がこんな状態だから、社員間でも思っていることがいいづらく、
コミュニケーションも活性化しないんだと思う。
この状態を何とかしようと思う。
そんなわけで、まずは、皆さんが何を考えているか知ることから始めようと考えたんだ。
たとえば、今の仕事について、どんな風に感じているか
やりがいはどうか
仕事をしていて、気になることや困っていることはないか・・・
1人1人の考えていることや要望などが分かったら、会社として、出来るだけ、それに応えていきたいと思う。
また、話をきくことで、社員の発想や強みを活かした会社を作っていきたい。
いきなり聞かれても答えにくいとは思うが、
思いついたことからいい。
〇〇さんの考えていることを聞かせてもらえると嬉しい。」
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こんなふうに丁寧に、背景にある事情や質問の意図を説明されると、
その間に
自分の考えをまとめることができますよね。
また、「社員の話をきくことで、社員の発想や強みを活かした組織作りがしたい」という
面談の意図が分かれば、
社員も身構えることなく、話せます。
(質問される意図が分からないままだと「なぜ、いきなりこんなことを尋ねるんだろう?
ひょっとしたら、答え方次第で、自分の評価に関わるかもしれない」など、
不要な警戒心を持たれてしまう可能性もありますよね。)
②例を挙げる
質問する意図や目的を伝え手も、なかなか考えが浮かばない人もいるでしょう。
その場合は、他の人の出した意見を例に挙げると効果的です。
たとえば、、、
「仕事をしていて、やりづらいなと感じたり、こういうふうに改善できるといいなという
意見があったら、教えてほしい。
たとえば、
ある社員からは、『人によって電話応対力に差があるので、電話応対の研修を受け、マニュアルを作りたい』という意見も出たし、
他には、
『朝礼のとき、元気がないので、内容を変えてはどうか』という意見もあった。
こんな感じで、自分の仕事でも、会社全体のことでもいいので、
〇〇さんの気になることがあれば、教えてほしい。」
こんなふうに、他の意見を示すことで、話し手の発想を刺激することができるわけです。
早速、このアドバイスを面談に活かしてくれたHさん、
「想像以上に、社員からいろんな意見が出てきました。
社員たちが、会社の将来のことを真剣に考えていることが分かりました。
業務の改善案も出てきて、
そっちはすぐに手をつけると、その場で伝えました。
やはり話を聞かないと分からないことが多いですね。」
と弾んだ声で報告してくれました。
質問のしかたに工夫することで、
答える側のハードルをグンとさげ、意見を引き出しやすくなります。
面談や会議の場で、ぜひ活用してみてくださいね。