新潟在住のフリーアナウンサー&伝わる話し方の専門家、
小紫真由美です。
今、かみしめるように、
この本を読んでいる。
まだ読み進めている途中だが、
一つ一つのメッセージが私の心に染みわたるのを感じる。
著者は電通のコピーライター。
たった十数文字で「人の心に響く言葉」を紡ぎだすために、
真剣に言葉に向き合ってきた人が行き着いた、
本当に人の心に響く言葉とは、どこから生まれるか
その答が、この本には書いてある。
こういう言い方をすると、著者に対して、おこがましいかもしれないが、
私自身が、ずっと思っていたことを、言い表してもらったような、心の内を掘り当てられたような気持ちだ。
書店に行けば、「相手を動かす話し方のテクニック」の類いの本が無数にあふれている。
それは、このテーマで悩んでいる人が非常に多いことの表れだろう。
しかし、著者いわく
「人を動かそうとすることは不可能であり、動きたい気分や空気を作るしかない」
そして、そのためには、伝え手が、自らの思いや考えに向き合い、自らに問いかけ、答を出し続けることが何より大事で、
本気の志を、相手と共有できた結果として、相手が動くのだという。
実は私も、ここ数年、自分のセミナーでは、あえて、「人を動かす話し方」ではなく「相手が自ら動きたくなる関わり方」という伝え方をし続けている。
自分が大事にしてきたことを後押しされたようで、心強く感じた。
「大切なのは、自分の考えや思いを把握していることである。
その内容を伝えるためには。難しい言葉も、耳障りのいい言葉も、美しい言葉もいらない。」
「人の心を動かすのは、話している本人の本気度や使命感であり、生きる上で感じてきた気持ちが
総動員された、体温の言葉なのだ。」
なんというシンプル、それでいて、突き刺さってくる言葉だろう。
おそらく、私自身も、今まで生きてきた中で、自分の中で本当に湧き上がってきた言葉だけでなく、
時に、綺麗な言葉に頼って、その場を流した経験があるからこそ、刺さるのだと思う。
誰しも、こんなことはないだろうか。
どんなにキレイな言葉や表現を聴かされても、聴いた端から忘れてしまうスピーチがある一方で
どもりながらでも、つっかえながらでも、その人が、自らの経験をもとに、本気で語った言葉に
深く心を動かされたという経験が。
話し方や美しい言葉がすらすらと出てくる人が、良い話し手であるとは、到底思えない。
その人の体験から感じたこと、心から伝えたいと思っていることが
その人の中に厳然として存在すること。
それが伝わることの前提なのだだと思う。
伝えたい思いや意見が、その人自身の中に本気レベルに達していなければ
それをどう飾り立てたところで、どれほど伝えるテクニックを駆使したところで、
ただの上滑りのトークにしかならないだろう。
言葉数が多い人間よりも、自分の思いと向き合った上で、伝えたい言葉を発する。そんな人でいたい。
そこまで考えてふと、自分の仕事について気付いた。
話し方やプレゼンを仕事にしているけれど、
私の仕事は、伝わる話し方のテクニックを教えることよりも、
ほとんどが、それ以前の、その人の内側にある言葉を発掘していくお手伝いだったということを。
どう伝えるか、どんな言葉で表現するか・・・というのは、
内側にある言葉を引き出した後の仕事になる。
トークが伝わらないのは、伝え方が問題なのではなく、
ひょっとしたら、口に出す以前の、自分の中の思いが熟成されていないからかもしれない。